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2009/レポート1
(取材報告)

平成21年度新規採用職員研修 「危機管理」 /防災課 その2
 
/区危機管理室防災課(4月22日13時00分〜16時00分

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進行役の小島さん■ 災害対応を皆で考えてみましょう
 
/災害対応ゲーム「クロスロード」(決断の分かれ道を描いたゲーム)
 進行は、防災課の小島啓貴さん。各テーブルには、一人ずつ防災課職員が付いてアドバイス役を担いました。
※ 講義で使った資料は、<資料3>です。申し訳ありませんがその1に記載したとおり、パソコン上でのみ見ることができるpdfファイルとなっています。

 カードを用いた災害対応ゲームです。質問に対して、各自がYes、Noカードで自分の意見を示し、多数決によって勝者を決定します。といても、実は正解がありません。少数意見も貴重であるという観点から、一人だけの意見だった場合には、ポイントを取得します。(それぞれ、お菓子がもらえます)
 司会、記録、発表者1名を決めて行います。

 全部で3問です。1分間で、各自の意見をまとめ、手元にあるYes、Noカードを一斉に出しあったあと、グループ全体でワークシートを作成してください。意見・問題点を書いていき、最後に班の意見をまとめて書き入れます。1問20分でまとめましょう。

 発表は、1から3班は設問3を、4,5班は設問2を、6,7班は設問1です。


<編注> 以下はその発表された班ごとの答で、順に、

a) 各自の回答
b) イエスの意見
c) ノーの意見
d) イエス(呼びかける)の問題点
e) ノー(呼びかけない)の問題点
f) 班の結論
g) 班の意見を実現するための課題(事前対策を含む)

としてあります。

※ このクロスロードについては、以前掲載したレポートがありますので、ご参照ください。
   >> ぼうさいカフェ in ねりま(2007年9月)

設問1設問1)
 あなたは避難拠点要員。被災から数時間。避難拠点には1000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食料は600食。以降の見通しは、いまのところなし。まず600食を配る?

<6班の発表>

a) 6人が配る(Yes)、1人が配らない(No)。
b)
・配らないと賞味期限が切れてしまうのでは。600食あるなかで
 残りのメドがたつまで400人分分けていく。
・お年寄り、子ども、女の人などを優先して配ったらどうか。
・生活弱者を優先し、すべてに配らなくても良いのでは。
・1000人は家族単位で避難しているのでは→家族で分け合う。
・いたんだ食料を与えることになると食中毒などの恐れがあるため。
c)
・400人分が足りないなかで、その400人をどう選ぶのか? 見通しがもてないなかで、配ることはできない。
d)Yes(配る)の問題点:公平性が保たれない
・優先順位の付け方が難しい。
・分けるのはいいが、大人数になるとどうしたらよいか。
・避難してから数時間しかたっておらず、パニックを起こしているなかで配っても、分け合えないのでは。
e) No(配らない)の問題点:食料提供者や避難者からの批判・苦情
・賞味期限が切れる。
・体力がない人(お年寄りや子ども)の体力がもたないのでは。
・後々、持っていたことが公になった場合、なんで配らなかったのかとクレームがあるかもしれない。
・廃棄ができない分、食中毒の恐れがあるのでは。
会場の様子f)Yesでまとまる。
g)そのときの状況をよくみて、まず被災者を落ち着かせるのが大事で、そのあと配ったほうがよいのではないか。現時点では食料がないことを伝えたうえで、被災者の方々にも協力してもらう。

<7班>
a) 全員Yes(配る)
b)
 ・子ども、お年寄りに先に配り、我慢できる人は我慢を。
 ・本当に必要な人にとりあえず配る。
 ・分け合って配る。または世帯でやりくり。3人家族なら2つとか。
 ・600食しかないので、「先にお子さん、お年寄りに配る」と説明したうえで配る。
 ・配食せずそのまま抱えていると消費期限が切れるなどの問題が起こってくるので、まずは必要な人に配る。
d) Yes(配る)の問題点:公平性が保たれない
 ・誰に配るのかその基準を決めるのは誰か。
 ・見通しがないなかで、その不安感を誰がどうやって取り除いていくのか。
 ・なぜこれしか私にはないのか、といった不満が出てくる(1人1食、いかなくなってくるので)→声かけもしていかないといけないのでは。納得される話し方、誠意などその対応の仕方が問題。
f) Yes(配る)に
g)
 ・分けられるものならば、1000人分にわける。
 ・分けられないものなら、ルールを事前に作っておき、(小学生、高齢者など)優先順位で分けていく。
 ・もらえなかった人には気分を和らげられるお風呂等で代替し、声かけを行う。お風呂先にどうぞなど、希望を聞いたり声をかけたりする。
 ・今の状況の説明をしっかりする。(600食しかない、これからの見通しはたっていない)→すべて状況は伝えて、来たら必ず渡します、などと誠意を伝える。

設問2設問2
 あなたは区役所職員。未明の大地震で自宅は半壊状態。幸いケガはなかったが、家族は心細そうにしている。、電車も止まって、出勤には歩いて2・3時間が見込まれる。出勤するかどうか?

<4班>
a) Yes(出勤する) 5人、No(出勤しない) 2人
b)
 ・職員体制が2人なので、行かなくてはいけないと思う。
 ・父母は高齢ではないので、まだ大丈夫(老人じゃないので)。出勤する。
 ・(ケガがなかったなら)子どものことを考えると行かなくてはいけない。
 ・防災寮に入っているので庁舎に行かなくてはいけない。
c)
 ・園長に確認してから決める。
 ・未明なので、大丈夫じゃないか(子どもはまだ登室していない)
 ・家族のことを考えたら、絶対行けない(心細そうにされたら行けない。一人娘なので)自分がそばに居ないといけない。
 ・歩いて2,3時間かかるということで、行く途中で余震にあうかもしれないので、自分の身も守ることも考える。
d) Yes(出勤する)の問題点:家族の不安や反発
 ・自分しか支えてあげる人がいなかったら(自分の子どもや高齢の親がいる場合)
 ・余震があるかもしれない→自分の身の危険
e) No(出勤しない)の問題点:職場が混乱する
 ・働いている親が子どもを預けにくるかも。
 ・行かないと情報が入らない。
 ・行かなかった場合の区職員の周りの反応。白い目で見られるかも。
会場の様子f)
 ・見通しがもててからいく。
 ・家庭の状況を考えてのマニュアルを作る。(子どもがいる人、独身の人など)
 ・家族を安全な場所に避難させてから行く。
 ・事前に近隣の方とコミュニケーションをとっておいて、何かあったら頼むようにする。

<5班>
a) Yes(出勤する) 5人、No(出勤しない) 2人
b)
 ・任務であるため(家族を安全なところに行かせてから)
 ・区の職員であるため、大勢の人の助けになりたい。
 ・家族を預けられる人に預けた上でやれることはやって、任せる。
c)
 ・職員としていかねばと思うが、実際に出勤できるか。
 ・様子みてから。
d) Yes(出勤する)の問題点:家族の不安や反発
 ・自分の家族が心配で、実際にはすぐに出勤できないのではないか。
 ・出勤する途中で災害に巻き込まれるかもしれない。
e) No(出勤しない)の問題点:職場が混乱する
 ・1〜2日災害から経つと行ってもどうなの、という気がする。
 ・出勤する人が足りない(誰も行かなくなっちゃう。人任せに)
f) No(出勤しない) が3人になったので、班の意見としてはNoに。
g)
 ・1〜2日様子をみてから、出勤する。(本当は行かなければならないが)家族が大切。
 ・自分の家族の形態によって異なる。

設問3設問3
 あなたは避難拠点要員。担当避難拠点の体育館にいる。館内では毛布が不足気味。折りよく取材にきたTVニュースの番組スタッフがいる。テレビを通じて毛布提供を呼びかける?

<1班>
a) Yes(呼びかける) 5人、No(呼びかけない) 2人
b)
 ・東京都に入るメディアでは全国ネットでは。だとしたら広く伝わる。
 ・毛布はくさらず、いろいろ使えるから、多すぎても困らないと思う。
 ・保温にもじゅうたんの変わりにもなる。多すぎれば、まわりに声をかけて分けることもできる。足りないよりは多いほうがよいのでは。
 ・届くことで被災者の心の安定につながると思う。
c)
 ・テレビが入るならライフラインがあるから、大丈夫だと思う。
 ・ライフラインがそれほど悪くないのであれば、近場で決まった分だけ持ってきてもらえるのでは。
 ・体育館内分レベルであれば、他の方法を使ったほうがスムースなのでは。
 ・毛布が来すぎたら、もったいない。
f)もう一度話し合った班の意見はYes(呼びかける)に。
g)
 ・メディアへの伝え方次第ではないか。毛布が欲しいと言ったら、機転を利かせて他の物資がくる可能性があるのではないか(→食べ物が来すぎて腐ってしまうかもしれない)。打ち合わせをして過剰な報道をしないようにしてもらう。具体的に何枚足りない状況です、協力してくださいなどと言う。送り先や集め先を数箇所にするなど、物資の流れを統一して混乱のないようにする、事前にメディアと話し合って「こう伝えてください」と言っておく。

<2班>
a) Yes(呼びかける) 2人、No(呼びかけない) 5人。
b)
 ・寒いときついのでたくさんあったほうが、ないよりはいいのではないか。
 ・具体的な情報を提示し、呼びかける。
c)
 ・身近な自衛隊などに要請するのが先ではないか。一番最初に公共の電波を使うのはよくないのではないか(自分勝手な判断)。
 ・一般の人に直接もってきてもらうと、事故に巻き込まれる可能性。
 ・余ったら、送ってもらった人に申し訳ない。
d) Yes(呼びかける)の問題点:毛布だけが集まる
 ・届けてくれた人の二次災害(一般人の)
e) No(呼びかけない)の問題点:物資不足が解消されない
 ・物資不足に対応していないんじゃないかと不満や苦情が出る。体調不良も出るのでは。
f) 最終的にNo(呼びかけない)ということに。個人的な判断での呼びかけは×。
g)会場の様子
 ・物資を充実させておく。
 ・要員のなかで、物資の担当する人とか、役割分担し迅速に動けるようにしておくこと。

<3班>
a) Yes(呼びかける) 5人、No(呼びかけない) 2人
b)
 ・いま足りなくて必要、と全国、国、他の自治体に呼びかける効果があるのでは。
 ・方法はいくつあっても良い、せっかくの機会をのがしたらもったいない。
c)
 ・テレビを使わなくてもよい、他の方法がある(近所、他の避難拠点からもらえばいい)
d) Yes(呼びかける)の問題点:毛布だけが集まる
 ・混乱する。(片付けにもボランティア必要)
 ・呼びかけても集まるかどうかはわからない。過剰に集まる。
 ・テレビなので受けて側が不特定。
e) No(呼びかけない)の問題点:物資不足が解消されない
 ・ライフラインが止まっていれば、毛布を集める方法がない。
 ・周りからも借りられないこともある。
f) Yes(呼びかける) 5人、No(呼びかけない) 3人。班の意見はYes。
g)
 ・練馬区本部に連絡し、どの拠点に何がどれだけ不足しているのか、無線連絡をしっかり取るようにする(区内連携をしっかりとる)。
 ・送り場所をはっきりさせておく(本部に送ってもらって無線で分けあう)

松本係長【発表を受けての講評】 防災課区民防災第一係 松本義行係長

 これは、実際の阪神大震災(神戸)での体験をもとに作られたゲームです。
 私たちの多くは災害を体験したことがないことから、過去の災害からイメージしたり、考えておくことが危機管理であり、段取りです。何かあったら、どうしようなどといった考えや備えが大切になります。
  また、イメージだけではダメで、訓練が必要です。頭のなかでイメージし、訓練で確認することができます。

 発表を聞かせていただいたのを受けて、順に解説しますと、まず設問1の配食の問題では、高齢者、子どもから配るといったやり方はよい方法ですし、被災者に対して状況説明を行うことも大事です。
 区の避難拠点には600人分の食料が備蓄されています。体の弱い人から配っていくなど、あらかじめ避難所でルールを決めておくことが必要です。当然、待たなければならない人もいます。その場合、避難拠点だけでは判断ができませんので、本部と連絡をとりながら、情報を与えながら待ってもらいましょう。おなかのすいている人にお風呂をという話がありましたが、そういうわけにもいきません。おなかを満たすことが大切です。もう少し待っていただければ、届きますなど伝えましょう。

 設問2の参集について。公務員として、区民の方の生命を守るため、参集が原則です。
 お母さん、お父さんを残して参集できない場合は、必ず連絡をしてください。災害伝言ダイヤル171や掲示板などで、職場の方と連絡がとれるようにしてください。
 また、参集できるように、自分の身の回り、ケガをしないように死なない工夫をしてほしいと思います。家具が倒れてきて下敷きになって死なないようにすることが大事です。まず自分の寝る部屋を片付けてもらって、死なないようにしてもらいたいと思います。また、近所の方とコミュにケーションをとり、出勤したあと、家族を見てもらえるようにしておくことも大事です。

 設問3は、さきほどの柏崎市の事例ように、テレビで放映されると物資はどっと集まって来ます。テレビで報道される所とされない所との差が大きいといった側面もあります。
 マスコミをうまく利用することも大事ですが、職員一人ひとりが瞬時に判断して話すのは難しいことです。避難拠点の責任者が本部と相談しながら、必要なものを必要な数、送ってもらえるようにしてもらいましょう。
 新潟県中越地震以降、扱いに困り救援物資を受け取らないように決めたところもあります。現実的なところで言うなら、募金を募るのも一つの方法です。物が集まったらどうしようといったことも考えて、行動していかなければなりません。
 腐らないから毛布はたくさんあってもいいという話がありましたが、ペットボトルの水がたくさん来てしまって、結局捨てたという例もあります。物が集まることによって、地域のお店もダメになるということもあります。募金が一番望ましい形です。

 これらの問題に関しては、またそれぞれ職場にかえってから、話し合ってみてください。

 講師の皆さん、研修生の皆さん、お疲れさまでした。興味深く拝聴させていただきました。
 今年から、消防署の普通救命講習も受けられているとのこと、心強く感じました。まだご実感がわかないことと思いますが、さまざまな場面で今回の研修を思い起こし、できることから実行していただけたら、と願っています。

 特に「練馬区をとりまく災害と区職員としての心構え」は、一般の方にも、よい教材になると思いますが、練馬区民が相対しなければいけない敵は、主に大地震と浸水被害です。大地震では、防災課の方が繰り返しおっしゃっていたように、地震に強い家に住み、ふだんから家具が倒れてこないような場所で過ごす必要があります。
 >>家具が倒れてこないようにしておきましょう
 >>地震に強い家に住みましょう

 浸水被害では、幸い区内には決壊するような川はありませんが、都内の下水道は1時間に水を50ミリまでしか流すことができませんから、当然、1時間に50ミリ前後の大雨で水がたまり、下水に流れていかなくなります。石神井川の水位が増して川から水があふれてくることや、坂道の下で水がたまっていることを把握せずに車で突っ込んで浮いてしまったケースもあります。
 区の洪水ハザードマップは、浸水被害が起きやすい地域・低地がわかるので、ひとつの目安になります。ふだんから見て、確認しておきましょう。

 後半行われたクロスロードの設問3について少し補足させていただきます。
 最近では、一般の方からの大量な救援物資は、被災地における「第2の災害」として受け取られ始めています。
 たとえば、新潟県中越地震で、長岡市には災害発生から3週間で46,500件、10トントラックで約450台分もの救援物資が送られてきました。置き場所がなく、新たに倉庫を借りなくてはいけませんでした(費用もかかります)。物資の引き取り手も見つからず、一時は200名を超えるボランティアの手を借りながら分類をしていたこともありました(これはスーパーが回復してからも続いていた作業でした)。
 一般に、個人から送られてきたダンボール箱には、さまざまな物が一緒に入っています。食料(たとえばおにぎり)と衣服が一緒に入って腐ってしまっている場合もあります。衣服は古着で気持ちよく着るのが難しいといった場合もあります。
 一方で、地域では人手が足りない状態で被災した多くの方や地域のケアが必要なとき、こうした救援物資の分類に人材を投入することは難しい状態です。
  このようなことから、救援物資は被災者に対する思いやりや善意の表れであることを承知しつつも、その善意を生かしきれない現実があることから、長岡市や鳥取県では、「防災計画」に原則個人からの救援物資は受け取らない旨、記載することになりました。

 なお、蛇足ですが、ご講演をうかがいながら、保育士さんたちが学ぶこうした機会があるのなら、子どもたちはふだん通っている保育園等に避難できるようになるとよいな、と思いました。
 子どもたちは、災害時、あまりにも大きな揺れと環境の変化から、不安と恐れによって情緒不安定となり、揺れのたびに震えたり一人でいるのを嫌がったりします。でも、いつも通っている保育園なら安心して、いつものおもちゃと遊びながら落ち着いて過ごすことができます。さらに、保育園等なら抵抗力が少ない子どもたちの衛生面に配慮することもできます。多くの人があふれる体育館等では、季節によっては底冷えして風邪がはやったりと、なかなか衛生面が保たれませんし、食事も口にあうかわかりません。また、小さな子どもたちを抱えたお母さんが食事をもらうために長時間並ぶことは難しいでしょう。保育園等にお子さんを預けることができれば、親御さんも安心して自宅の片付けなどにも専念できます。
 避難拠点にあるような大きな備蓄倉庫ではなく、入れるものもバーナーはプロパンガスに、トイレも組み立て用ではなく簡易トイレに、水も赤ちゃんでも飲める水のペットボトルに離乳食などといった防災グッズがそろっていると理想的ですね〜。
  <ご参考まで>子育て世代の皆さんの防災対策

 て、もう実施されてたりして…。(^o^;
 まだでしたら、どうぞ、よろしくご検討ください♪ (*゚▽゚)ノ 

レポーター
秋山 真理(ねりま減災どっとこむ)

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