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2007/レポート11
(取材報告)

防災講演会「新潟県中越地震からの教訓」新潟県長岡市青葉台3丁目自主防災会 畔上純一郎さん
防災功労者功労団体表彰式を含め1月27日13時00分〜15時00分

 2008年1月27日、武蔵大学大講堂において、防災功労者功労団体表彰式とともに、防災講演会が行われました。

表彰式のようす
<事例紹介>練馬区の小竹町会連合防災会/本部長 佐藤健治さん

 防災講演会では、まず事例発表として区の「小竹町会連合防災会」の佐藤健治さん、新潟県中越地震からの教訓として新潟県長岡市の畔上純一郎さんからお話がありました。
 ここでは、2004年に起きた新潟県中越地震のご経験からわざわざ長岡市からお出でいただきました畔上さんのお話のご紹介をさせていただきます。

■ 新潟県中越地震からの教訓

 以下は、畔上さんからご提供いただいたレジュメと、講演の詳細です。講演の詳細は区防災課でまとめていただきました。

 >> 講演のレジュメ(pdfファイル)

 >> 練馬区防災講演会「新潟県中越地震からの教訓」のまとめ(区防災課作成)(pdfファイル)

【感 想】

 皆さんもご存じと思いますが、2004年新潟県中越地震では、特に山古志村で地盤が大きく動いたことから、いたるところで道路が寸断され、長い間、村中が避難を余儀なくされました。
 長岡市は、その山古志村を支え続けた自治体のひとつです。畔上さんはたまたま山古志村のご出身でいらっしゃるとのことでしたが、山古志村の方々の仮設住宅が長岡ニュータウンに設置されたことから、村民の皆さんが、少しでも不安をやわらげ、いままでの暮らしと同じような生活ができるようにと、中心となってご尽力された方でもあります。
 そうした経験も手伝ってか、災害時の臨機応変な対応などとともに、大変示唆に富んだお話をうかがうことができました。

 詳細は、上に示したまとめをご覧いただくとして、ここでは、地域性、土地柄などとは関係なく、区の現状に鑑み、特に印象に残った点、参考になる事項について、ふれさせていただこうと思います。

中越市民防災安全士・青葉台3丁目自主防災会委員長 畔上純一郎さんによるご講演

○災害時の救助カード:まとめの4ページから5ページ
 各世帯の救助内容や家の間取りを明示し、家の見取図でどこからどう入っていったら対象者の部屋にたどり着けるかがわかる。家屋が倒壊していたら、どの壁や窓を壊せばいいのかということも世帯主と打ち合わせをしておくといったことでした。
 多くの家屋が倒壊した阪神・淡路大震災において、淡路町でその日のうちに島民の安否が確認できたのも、「この時間には、誰はどこにいる」「どこで寝ている」ことを近所の方が把握していたからです。倒壊した家からの救助では、その寝ている部屋あたりを集中的に探すことができました。

○ 外国人への対応不足;同8ページ
 対応不足があり、地震が起きない国や内紛などがある国から来た人は、戦争が起こったものと取り違えたり、対応を間違えると物資の奪い合いも…、といったことでした。
 外国人とは表面的な生活習慣や食事などが異なるだけでなく、不安を解消するためのやり方やストレス発散方法も異なります。こうした配慮は、とても難しいものですから、できるだけ避難拠点や自主防災組織のスタッフにふだんから外国人の方と一緒に働いたり、コミュニケ−ションをとっている方などにご参加いただけると理想的です。

○緊急時、現場にいる人がリーダー:同8ページ
 中越地震からの反省として、1人が最初にいたら、その人がリーダー。2人いたら、うち1人をリーダに決める、といったことでした。
 個人的には心にもっとも響いたお話でした。あとでお話をうかがうと、青葉台3丁目の自主防災会にはノルマやしばりがまったくないとのこと。訓練はできるだけ手間をかけずに(人を集める仕掛けはするが)、リーダーは持ち回りで訓練を行うそうです。
 防災委員になるということに対しても、地域の方には構えるところがないとのことで、たとえば、転勤などで抜ける方がいらっしゃると欠員ができるので「あなた、やってくれる?」と聞くとたいていは「いいよ」とすんなりお引き受けになるとのことですし、今度、畔上さんが委員長を辞められるのに「代わりにやって」と声をかけたら、その方は「いいよ」とお引き受けになったとのこと。
 そうした良い意味での気軽さはどこから来ているのか、とても不思議な感じがしましたが、訓練は失敗してもよいというのが基本ということが浸透しているのに加え、小嶋さんのご説明では、「訓練などを経てすでに必要なもの(表など)が揃い、何をしたらいいのかわかっているので『だったらおれにもできるかな』とわかってくるのではないか」とのことでした。訓練を通じ、平時から何を確認しておいたらいいのかをすでに周りの方と共有できているご様子でした。
 これにはもちろん、畔上さんのお人柄や日頃の集まりや祭りなどを大事になさる地域活動によるところが大きいとは思いますが、災害時には、リーダーが常に近くにいるとは限りません。何ごともリーダーに判断をと考えがちですが、ふだんの活動から、誰もがその場その場で判断できるように意識付け、判断してもいいんだという習慣付けやトレーニングをしておくことも、とても重要なことだと思いました。

○ユニフォームが威力を発揮:同9ページ
 ユニフォームで活動したことで認知され、地域住民の災害時の活動への理解が深まるとともに安心感も増し活動しやすくなったとのことでした。
 ユニフォームは意外と大事です。災害時の効果もそうですが、ふだんも地域の方からよく見られていますから、宣伝効果もとてもあります。
 写真で畔上さんが着ていらっしゃる黄色いユニフォームは、それぞれの方の自前で購入(上下で5000円程度、帽子は1000円のに既存の刺繍をつけた)なさっているそうです。既存のものにネームを付けたりと工夫をなさっているとのことで、ユニフォームが地域に浸透してくると、格好が良いから着たいと思われる方も出ていらっしゃるとか…。活動によっては、消防庁レスキュー隊のオレンジのように、子どもたちが憧れる存在になりうるものだな、と思いました。

○町内に防災情報掲示板:同10ページ
 防災委員や市が災害情報を届ける形だったのを、災害掲示板までは情報を届けるので、皆さんはここに取りに来て下さい、といったことでした。
 私も、実は区もこういう形にするといいのにな、と考えていました。練馬区で情報の拠点となると想定されているのは、まずは区立小中学校に設けられる避難拠点ですが、地域住民全員が頻繁に情報を聞きに行くことはできないでしょうし、逆に拠点に多くの人が頻繁に訪れる状態も大変だからです。
 区では、被災後の長い期間にわたるお知らせを印刷物としてバイクなどによって拠点に届けることも想定していますが、町会、自治会がもっている掲示板がありますし、区民館などにも掲示板があります。こうした掲示板の活用方法を、お考えいただきたいと思います。

○災害状況把握町内拡大地図の作成:同10ページ
 A0サイズの町内拡大地図を用意、といったことでした。
 区でも、できれば拠点に最低1枚は欲しいですね。できれば、その地域周辺のものと広域なものと2つのパターンがあると良いです。(前者は、3枚くらいは欲しいな♪)住宅地図はあまり正確でない場合もありますので、今後、区で整備中の地図データの活用を期待しています。(*^_^*)

コミュニティの強化が地域力、防災力の向上につながっていく、日頃からコミュニケーション第一、と話す畔上純一郎さん。
中越市民防災安全大学の1期生でもあります。あたたかいお人柄がにじみ出ていました♪
長岡市危機管理防災本部 総括副主幹の小嶋洋一さん。
被災地の経験を生かした日本一災害に強い都市(まち)づくりを進めている長岡市。畔上さんを市防災のトップランナーとしてご紹介くださいました。

 背伸びすることなく、できるだけ負担と感じさせずに地域コミュニティを強化していく。人に気づかせないものの実は強力なクモの糸をお持ちの畔上さんでした(笑)。
 2004年、不幸にもごく身近に水害と大地震を立続けに経験なさった長岡市。小嶋さんによると、災害に対する感受性は高くなっているいま、住民には打てば響くとのこと。百聞は一見にしかず。中越沖地震でもがんばっている。ぜひ復興状況を見に長岡のほうにいらしてください、とのことでした。

 畔上さん、小嶋さん、長岡より寒いとお感じになる練馬区にお越しいただきまして、ありがとうございました。(笑)
 今後ともどうぞよろしくお願いします。  (^◇^)/ 


 このたび、新潟県長岡市危機管理防災本部の危機管理監でいらっしゃる笠原芳彦さんから、練馬区民の皆さんに向けたメッセージを寄せていただきました。以下に、掲載させていただきます。pdfファイルでもご覧いただけます。
 >>練馬区民の皆様へ(pdfファイル)/新潟県長岡市危機管理防災本部 危機管理監 笠原芳彦さん

練馬区民の皆様へ

 はじめまして、危機管理監の笠原と申します。この度の講演会で練馬区とご縁ができましたことを喜んでおります。

 さて、ご承知のとおり、長岡市は、水害、地震と立て続けに大災害に見舞われ甚大な被害を受けましたが、ここにきて、ようやくインフラ整備が終わり本格的な復興に向けて歩み始めたところです。今日まで当市をあたたかく支えていただいた皆様には、この場をお借りして心から感謝を申し上げます。

 長岡市では、現在、災害の教訓を生かし「日本一災害に強い都市づくり」をめざし防災体制の強化に取組んでおります。その一つが「地域防災力の強化」であり、災害時には、個人やコミュニティの力をどれだけ引き出せるか、そして、その仕組みを日ごろからいかに用意できるかということが、防災・減災の大きな鍵と考えております。

 青葉台地区は、その実戦的な取組みを行っている代表的な地区の一つであり、このような地区を増やしていくために、自主防災会の結成・活動支援や、防災や安全に関する専門的な知識・技能と意欲を持つ人材「中越市民防災安全士」の養成など様々な取組みを行っているところです。

 当市は大災害を経験した都市であります。ですから、今後も災害の教訓を生かした取組みを実践し、発信してまいります。それが全国からいただいたご支援に対する恩返しであると考えております。昨年末、仮設住宅がゼロになり、全村避難した山古志住民もようやく帰村が実現しました。長岡市のスローガン「前より前へ」を合言葉に、創造的復興をめざしこれからも力強く前進したいと思います。皆様には、変わらぬご支援ご声援をお願いいたしますとともに、練馬区の益々のご発展を祈念申し上げます。

  平成20年2月7日

長岡市危機管理防災本部
危機管理監 笠原芳彦 

 お忙しいなか、わざわざお言葉をお寄せていただきまして、誠にありがとうごございました。  ぺこり (o_ _)o))
 長岡市の益々のご発展とともに、これからもご復興が順調に進まれますよう、心より祈念申し上げます。

 区民の皆さ〜ん、機会がございましたら、ぜひ長岡市を訪れてみてはいかがでしょう〜♪ 海も山もありま〜す♪

レポーター
秋山 真理(ねりま減災どっとこむ)

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